- スラロームのタイムがなかなか上がらない
- 上手い人は1速で通過するって聞いたけどホント?
- クラッチやギアをもっと上手く使えるようになりたい
そんな悩みにお答えします。
この記事を書いている僕は、教習所の教官として12年勤めていました。
バイク教習では1,500名以上を卒業させてきたプロフェッショナルで、バイクの運転を教えることに関しては、どの教官にも負ける気がしません。
結論からいうと、スラロームを1速で通過するのは大きな間違いです。1速スラロームは大ケガのもと。スラロームを通過するときギアは2速、クラッチは完全に繋ぐのがおすすめです。
この記事で紹介する方法を実践したお客さんの中には、女性でもスラロームを4秒台で通過できるまでに成長された人もいます。
スラロームが苦手な人もスラロームのタイムを上げたい人も、この記事を読むことでスラロームを通過するときのクラッチやギアの最適な使い方が理解できるようになるでしょう。
バイクスラロームのギアは何速?大型でも2速が正解
2速だと速すぎるから1速で…
こういった考え方は根本的に間違っています。タイムが上がらないどころか、ケガするリスクもあるので考え方を見直しましょう。
スラロームを1速で通過するデメリットは2つあります。
- アクセルワークが難しく、暴走の危険がある
- エンジンブレーキが効きすぎて、転倒の危険がある
1速だとアクセルワークが難しい→暴走の危険がある
1速だとアクセルオフ状態でスピードが出ないため、クラッチを繋ぎっぱなしの惰力走行でもクリアタイムに届きません。逆に1速はトルクが高いので、少しのアクセル操作でもバイクが急加速して暴走する危険があります。
1速スラロームは上級者のテクニックなので、免許取得を目指す段階ではおすすめしません。
1速だとエンジンブレーキが効きすぎる→転倒の危険がある
1速の場合、加速したあとにスロットルを戻すとブレーキをかけていないのに急減速します。急減速したときにバランスを崩して転倒してしまうリスクがあるため、お客さんはなかなかスピードを出すことができません。
そもそも1速スラロームは上達するのが遅い
なぜなら、自分が安全だと思えるスピードでしか練習していないから。バイクを暴走させないようにアクセルをほとんど使わない練習しかしないため、いつまで経ってもスラロームが上達しません。
なぜ、2速のスピードに対応できないのか。
その原因を知らないうちは、スラロームを何回練習してもほとんど意味がないです。安心してください。2速のスピードに対応できない原因については、記事の後半で解説します。
試験車両がリッタークラスなら1速通行も選択肢としてアリ
大型二輪免許の場合、多くの教習所ではNC750Lというバイクを使うことが一般的です。しかし一部の教習所や免許センターでは、XJR1300という1000ccを超えるバイクが試験車両になっているとことも。
XJR1300の場合、ちゃんと暖気運転されていないと2速スラロームはエンストしやすいため、クリアタイムを狙わずに1速で通過することも選択肢としてアリです。
とくに免許センターで一発試験を受ける場合は、初めての車両でサイズやパワーに慣れていないため、1速で半クラッチを使いながら通過が無難でしょう。
試験では、スラロームのタイムオーバーは気にするほどの減点ではありません。
クリアタイムから1秒増えるごとに5点の減点。30点までなら減点されても合格できます。
大型二輪免許なら12.9秒まで、普通二輪免許なら13.9秒まではギリギリセーフです。
とはいえ、ちゃんとスピードを出せる技術が身に付いていれば、どんなバイクでも2速通行がもっとも安全であることは変わりません。
バイクスラロームのクラッチは完全に繋ぐのが正解
タイムを上げるためにアクセル使うから半クラッチで…
スラロームでクラッチを切ったり半クラッチにすることは、まずありません。なぜならクラッチを切ったり半クラッチにすることで、車体を傾ける(バンクさせる)ことが難しくなるから。
スラロームでは推進力が超重要
推進力とは前に進もうとする力のことで、クラッチを完全に繋ぐことで生み出されます。加速するほど推進力は強くなり、車体を傾けることが簡単になります。
前に進もうとする推進力が強いほど車体を傾けても転倒せず、バランスを保つことができるわけです。
車体を傾けずにスラロームでクリアタイムを出すのは、無理だと思ってください。
半クラッチを使うのは「逃げの一手」
ベストタイムを狙うためスピードを上げる人に、半クラッチを使う人がいます。
これって実は、あまり意味がないんです。
- ベストタイムを狙うためにスピードを上げる
- 速いスピードに対応できないから半クラッチになる
- コントロールできるスピードまで落とすからタイムが変わらない
ベストタイムを狙うには、クラッチを繋いだ状態でも速いスピードをコントロールできるようになることが重要です。
バイクスラロームのタイムが上がる3つのコツ
2速でクラッチ繋ぎっぱなしが良いのは分かったけど、それができないから困ってる…
そんな人でも劇的にスラロームが簡単に感じるようになれる3つのコツをお伝えします。
- 目線を先に向ける
- 上体を動かさない
- アクセルとリアブレーキを使う
実際に練習するときは、①の目線から順番に意識していきましょう。「目線がクリアできたら②の運転姿勢を意識する」という流れです。
1.目線を先に向ける
スラロームでクリアタイムを狙うのにもっとも重要なのは目線のとり方です。クラッチやギアの操作は二の次でOK。
スラロームのタイムが上がらないのは目線が近すぎるから
スラロームが苦手な人は、見ているポイントが近すぎるのが原因です。すぐ目の前のパイロンを見ていると、次のパイロンへの対処が遅れます。そのため、スピードやギアを落として対処するしかなくなっているわけです。
スラロームが苦手な人の目線のとり方は、下記のとおり。
- 目の前のパイロンを見ている
- 避け終わるころに次のパイロンを見る
- 見てから避けるまでに対処する時間がない
- 間に合わないからスピードを落としてしまう
クラッチを切ったりギアを1速にしないと対処できない理由は、目線が近いからです。
ちなみに、スラロームが上手な人でも卒業検定に限ってパイロンにぶつけてしまうことがあります。これも目線が近いことが原因です。
ぶつけたら失格という意識が強くなると、ぶつけないように目の前のパイロンを直視しがち。
なるべく先を見るように意識することで、2速でもスラロームを通過することが簡単に感じるはずです。
スラロームは目線を先に向ければ余裕が生まれる
目線を先に向けておくことで、次に避けるパイロンまで把握することができます。
- 次のパイロンを避ける走行ラインが見える
- 次のパイロンとの間隔に余裕が持てる
- スピードを上げても対処が間に合う
- スラロームのタイムが縮まる
こんな具合に、目線を先に向けるだけで良い影響を必ず実感できます。
スラローム中に頭でゴチャゴチャ考えなくても、目線を先に向けるだけで身体が勝手に反応します。自然と正しい走行ラインを通れるので、安心してください。
目線を先に向けておけば、今までよりスピードを上げても余裕で通過できるようになります。
目線だけでかなり変わるので、お客さんも不思議がっていますね。
スタート時から目線は3つ目のパイロンを見ておきましょう
最初から3つ目のパイロンを見ておくことで、1~2本目のパイロンも視野に入ります。視野に入っていれば一つ一つを意識しなくても、意外と対処できるものです。
3つ目のパイロンに差し掛かったら、目線はゴールに向けましょう。
目線の移動が1回だけだから、めちゃめちゃラクです。まずはしっかり目線のとり方をマスターしてください。
何度も言いますが、スラロームで一番大切なのは目線のとり方です。
2.上体を動かさない
スラロームで身体を傾けるのは間違いです。身体を傾けるのではなく、バイクを傾けるのが正解。スラロームは、バイクを傾けてパイロンを避けられれば効率よくタイムを縮められます。
教官のスラロームをよく観察してみましょう
教官にお手本を見せてもらってください。上半身はほとんどブレていないはずです。とくに頭はピクリとも動かないのが観察できるでしょう。
もし教官が頭を左右に振っていたら、教官としてスキル不足です。即刻チェンジしてもらいましょう。笑
上体が安定すると目線が取りやすい
上記でも説明したように、スラロームでもっとも重要なのは目線のとり方です。頭を振っていれば、先のパイロンを上手く捉えることはできません。
頭を振らさず、しっかり目標を捉えましょう。
上体が安定するとバイクをしっかり傾けられる
バイクと一緒に身体まで傾いていれば、しっかりバイクを傾けることができません。無理をすればそのまま転倒してしまいます。
上体を動かさずに起こしておけば、重心がブレないのでバイクを限界まで傾けても転倒することはありません。
上体を安定させてバイクを傾けるコツはニーグリップ
- ニーグリップとは?
- 両膝でタンクを挟んでバイクと一体化するバランスのとり方。ニーグリップができていないと、スラロームのタイムはせいぜい7秒が限界です。
バイクを傾けてバランスを取るには、ニーグリップの習得が必須です。意外と意識していない人も多いんじゃないでしょうか?
ニーグリップを習得すれば、スラローム4秒台も夢ではありません。
誰でも簡単にニーグリップを作れるコツ
膝ではなく、つま先を意識しましょう。両足の親指をバイクに密着させれば、膝に力を入れなくても自然とタンクを挟む形が作れます。
3.アクセルとリアブレーキを使う
タイムを縮めるためにアクセルを使う考え方は間違いです。
アクセルを使う本来の目的は次の2つ。
- バイクを傾けても転倒しなくなる
- 傾いたバイクを起こす役割がある
つまりスラロームでアクセルを使う目的は、バランスを取るためということです。
スピードを上げればバイクをさらに傾けても転倒しない
スピードが出るほど推進力が強くなるので、バイクを傾けても転倒しなくなります。しかし、スピードを上げるためには目線と姿勢の2つがクリアできていることが前提条件です。
目線と姿勢を無視してスピードを上げた場合
- 目線がクリアできないと対処が間に合わない
- 姿勢がクリアできないと転倒リスクが高い
操作に慣れるまではアクセルは一定でOK
教官のスラロームでは、アクセルを「ブンッブンッブンッブンッブンッ」を小刻みにON/OFFしているのが観察できるでしょう。しかし、操作に慣れないうちから教官と同じアクセル操作を真似するのは危険です。
まずはプラス1km/hのイメージでアクセルを入れ続けてゴールを目指しましょう。それだけでも十分にクリアタイムは狙えます。
アクセルのON/OFF操作は、クリアタイムが出せてからでOKです。
パイロンを避けたあとにアクセルを入れて傾いたバイクを起こす
安定してクリアタイムが出せるようになったら、アクセルのON/OFF操作にチャレンジしてみましょう。アクセルはパイロンを避け終わるタイミングで入れます。パイロンを避けている途中でアクセルを入れると、遠心力が働いて外側に膨らみ、次のパイロンを避けきれません。
上の画像でいうと、赤矢印がアクセルのタイミングです。
パイロンを避けたあとにアクセルを入れ車体を起こせたら、すぐにRB(リアブレーキ)をかけて減速しながら車体を傾けます。ゴールまでこの繰り返しです。
スラロームでフロントブレーキは転倒リスクが高いので使いません。
発進からスピードを上げすぎるのは間違い
タイムを縮めようと急発進して突っ込んでいく人がいますが大回りになってしまい、それ以降のバランスが崩れます。
パイロンに突っ込むスピードを上げるのではなく、パイロンを避け終わったあとにバイクを起こすスピードを上げるだけでスラロームのタイムは大幅に縮まります。
突っ込むスピードより抜けるスピードを意識してください。
スローインファストアウト走行です。
アクセル操作が苦手なら3速スラローム練習がおすすめ
はじめに言っておくと3速スラロームはけっこう難しいです。2速スラロームで安定して通れるようになってから試してください。
3速スラローム練習は、発進してから最初のパイロンまでにしっかり加速してギアを3速まで上げます。スラローム中は3速でもクラッチを完全に放した状態で通行する練習法です。
3速スラロームで得られる3つのメリット
- 目線のとり方が身に付く
- 車体の倒し方が身に付く
- 必ずクリアタイムが出る
ギアを3速にすることで、強制的にスピードが上がります。アクセルオフの状態でもクラッチを完全に繋いでいればクリアタイムが出るスピードです。
早めに状況把握しないとすぐにパイロン接触してしまうので、目線を先に向けるようになります。また、ハンドル操作だけでは回避に限界があるので、車体を倒して回避するコツが掴めるといった、自分を追い込むための荒業です。
発進時は十分に加速しないとエンストして転倒するリスクがあるので、気をつけて練習してください。
まとめ:スラロームのコツを意識して最速タイムを狙おう
多くの教習所で採用されているCB400SFとNC750Lの教習車では、スラロームの最速タイムは3.5秒が限界と言われています。
僕自身は残念ながら3.8秒止まりでしたが、この記事でお伝えしたポイントを意識すれば教習所を卒業するまでに4秒台も十分狙えるでしょう。
- スタート時から3つ目のパイロンを見ておく
- 1つ目のパイロンまでに2速に入れてクラッチを放す
- リアブレーキで減速しながら車体だけを傾ける
- パイロンを避け終わると同時に少しだけ加速する
- 車体が起きたらすぐにリアブレーキで減速し手順③に戻る
- 3つ目のパイロンに差し掛かったら目線をゴールに向ける
- あとはゴールまで手順をリズミカルに繰り返す
上記の手順を参考に、安全に配慮してスラロームを攻略してください。
一本橋が苦手な人はこちらの記事も参考にどうぞ。
≫後日更新
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他車種は後日更新します。